癌と運動

「家族や知人が癌と診断されたことがある、もしくはご自身が癌と診断されたことがある」という方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。むしろ「周りに癌になった人は1人もいない」という方の方が少ないのかもしれません。なんせ日本人男性の2人に1人、女性は3人に1人が生涯で1度は癌と診断されるそうですから・・・。

 

そんな日本人にとって大変身近な病気である癌を「予防」する効果が運動にはある、ということはもはや常識かもしれませんが、癌の「治療」にも運動が役に立つ可能性がある!という話をご紹介したいと思います~。

 

動画がアップされたのは2016年で、その時点ではまだ研究の途中ではありましたが、非常に良い結果を出しており、運動が癌治療における『ゲーム・チェンジャー/game changer』になり得ると説明されていました。ゲーム・チェンジャーは、「試合の流れを一気に変えてしまう選手」つまり「物事の流れや状況を一変させること」を指します。

 

研究はオーストラリアのパースで行われました。プログラムに参加したのは全員が癌の診断を受けているオーストラリア人です。

 

この研究が始まったきっかけは、病院で実際に患者に接していた職員たちが感じていた疑問でした。その疑問とは、「どうして患者がこんなにも状態が悪くなり、体力が落ちてからリハビリをするんだ。化学療法と同時並行で運動療法を行えばもっと効果的ではないのか。」というものです。

 

この研究を行った研究者チームは元々、癌患者に対し運動療法を提供おり、運動が癌の致死率を大きく下げるということは知っていました。しかし、化学療法と同時に運動療法を行うということは初めての試みでした。

 

この動画を見た時に、「こんな研究は日本ではまずもってできないんじゃないかな~」と非常に驚きました。研究チームのリーダであるロバート・ニュートン博士も「化学療法は患者に大きな負担がかかる。化学療法と運動を同時に行うことが果たして本当に良いことなのか、本当に安全なのか、未知の冒険だった。」と語っていました。研究者たちはもちろん、このプログラムに参加した患者さんたちも勇気がありますね。

 

プログラムに最初に参加した患者さんの1人が画像のナタリー・マシューズさんです。2人の子供を持つ42歳のお母さんで、乳がんの診断を受けました。ナタリーさんの癌は「very adcanced/かなり進行していた」と言っていました。プログラムへの参加のお声がかかった時には、戸惑いもあったそうですが、「元々あまり健康的な体型ではなかった」ということで、参加を決意したそうです。

 

プログラムに参加した人は、化学療法の同日には病院内の運動室で運動をし、化学療法のない日には研究者たちが所属する大学のジムで週に3回の運動を行う、という形で行われました。もちろん専門家の監視の元に行われました。

 

運動の内容は一律ではなく、腫瘍の部位やその人の状態に応じて適宜決められます。プログラム開始時のナタリーさんの状態は決して良かったわけではありません。ご本人もご家族も不安で、小学生の息子さんたちには「やめて」とも言われたそうです。ところが運動を続けるうちに、化学療法後もソファでぐったりするということがなくなり、子供たちも安心したようです。

 

ナタリーさん自身も変化を感じており、疲労感や吐き気が減り、体にエネルギーが溢れるのを感じ取れるようになりました。ナタリーさんの化学療法は強めのものだったので、ナタリーさんの変化には研究者たちも驚いたそうです。しかも変わったのはナタリーさんだけではありません。このプログラムに参加した全ての癌患者が、運動を併用したことによって、化学療法後の疲労感・吐き気が軽減したのです😄

 

運動の効果はDEXA(デクサ)でも見て取ることができました。デクサは体脂肪量、筋肉量、骨量を測ることができる機械です。

 

治療期間にもよりますが、通常、化学療法を受けると筋肉量は大体10~15%落ちるそうです。ところがこのプログラムに参加した38人のうち筋肉量が低下した人はゼロで、筋肉量が増えた人までいたそうです。ナタリーさんは筋肉量が増えた人の1人です😄

 

 

なぜ運動がこれほどまでに効果を出したのか・・・ニュートン博士によると「血流」が関係しているそうです。腫瘍は血流が悪いため、化学療法を行ってもそれが腫瘍に十分には届かないのだそうです。運動を加えることで血流が良くなり、腫瘍へ抗がん剤などが浸透しやすくなったとニュートン博士は推測されていました。

 

 

 

 

動画の中では2013年に行われたある実験のことも紹介されていました。被験者は10人の健康な成人男性です。運動前と60分間の運動直後に採血を行いました。それぞれから血清を取り出し、前立腺癌の細胞に注入し、癌細胞が増殖するかどうかをみたそうです。なんと運動直後の血清を注入した癌細胞の方は、30%も増殖が抑えられたそうです。

 

この結果についてニュートン博士は、運動中に筋肉から放出される何らかの物質によって腫瘍が破壊されていることが示唆された、と話していました。

 

上記の実験結果を後押しするかのように2016年にデンマークで行われた実験のことも紹介されていました。5種類の癌細胞を持つマウスを自由に運動できるグループと運動をさせないグループとに分けたところ、運動したマウスのグループでは5種類全ての癌で、増殖が60~70%も抑えられたそうです。上記の画像の左が運動をしていないマウスの肺で、黒い部分が腫瘍です。右が運動をしたマウスの肺です。違いが歴然ですね!

 

マウスを使った上記の実験で、研究者が運動をしたマウスの腫瘍細胞の中で見つけたもの・・・それは「ナチュラルキラー細胞」です。運動によって「生まれつきの殺し屋」であるナチュラルキラー細胞が増え、その殺し屋が癌細胞を破壊してくれた、というわけです😄

 

ニュートン博士は「これは自らの体が抗がん剤を放出しているようなもの」と例えていました。しかも副作用が一切ない抗がん剤です。

 

運動って・・・素晴らしいですね😄

 

文:真木