運動でストレスは発散できるのか

 

今回はシャキット文庫の中から『脳を鍛えるには運動しかない!』という本の一部をご紹介します。あとがきまで入れると約350ページ、お値段も税抜き2,100円ということで、決して安くありません。2009年に発刊され、2019年には34刷目が発行されたロングセラーですが、よほどの読書好きじゃないと手が伸びないかもしれません。また副題が「最新科学でわかった脳細胞の増やし方」ということで、科学の話ももちろん出てきます。私のように、学生時代に理系の勉強を完全に遮断してきた人間には、じっくり読みこまないと理解できない箇所がたくさんありました😣

 

ということで、「興味あるけど、350ページも読みたくない」 「面白いところだけかいつまんで紹介してほしい」という方のために、真木が面白いと思った箇所だけをご紹介していきます。と、その前にあらかじめお伝えしたいのですが、私自身も「本の要約や誰かの感想」だけを見ることはよくあります。それを見て、その本を読むか読まないか、買うか買わないかを判断したりもします。ただ、要約や誰かの感想を知るのと、実際にその本を読むのとでは、全く別物の体験だと思います。特に感想に関しては、当然ながら全く違う風に感じることが多々あります。また、要約についても、重要と感じる場所や興味を持つ箇所は人それぞれだなと思うことはしょっちゅうあります。ですので、私の紹介も話半分で読んで下さい😁

 

 

ところで本題に入る前に、皆さんは「心」はどこにあると思いますか?「意識」とも言い換えられるかもしれません。あなたをあなたたらしめている心・意識はどこにありますか?なんだか哲学みたくなってきましたが・・・🙄

 

 

 

古代中国では心は心臓、腹部、胸部に宿ると考えられていたそうです。バビロニア(現代のイラク南部)では「肝臓」、ヒポクラテスは「脳」、プラトンは「脳と脊髄」、アリストテレスは「心臓」に心が宿ると考えていたそうです。

 

 

 

心の状態と脳の状態は密接な関係があるため、神経学者たちの多くは脳に心があると考えるようですが、近年は脳と意識(心)は別と考える専門家も出てきているようです。例えば、脳神経外科の世界的権威であるエベン・アレグザンダーさんは元々、意識は脳が作り出すという考えをお持ちだったそうです。ところが、自らの臨死体験を通して、意識を生み出すのは脳ではない、また意識は肉体が死を迎えた後も存続し続けると確信するようになったそうです。この方の本もいつかご紹介できればと思います。

 

 

 

私自身は心・意識、もっと言ってしまえば「魂」はみぞおち辺りにある!と勝手に思っています。というのも、例えばお客様から「シャキットで運動して疲れにくくなりました~」といったお話を聞くと、大変嬉しく感じるのですが、そういう時には大体みぞおちの辺りが温かくなるような感覚があるんです。「気のせい」と言われればそれまでですが・・・。たったそれだけのことなのですが、「みぞおち温かくなる」という現象から、科学を丸無視して、「心・意識・魂はみぞおち辺りにあり説」を導き出したというわけです() さて、皆様はどう考えられますか?

 

 

というわけで、私個人は「脳が心を生み出すのではなく、心が生み出したものを脳が表に出す」と思っています。主役はあくまで心・意識・魂、脳はそれを外部に発表する時にどのように行うかを管理する管理室的な場所だと思っています。ですので、私自身はそういう視点でこの本を読みました。ちなみに著者のジョン・J・レイティさんが「脳が先か、心が先か」をどう考えているかはわかりません。ただ序文の前にプラトンの言葉が紹介されているのは興味深く感じました。

 

 

 

『人生において成功するためには、神は人にふたつの手段を与えた。教育と運動である。しかし、前者によって魂を鍛え、後者によって体を鍛えよ、ということではない。その両方で、魂と体の両方を鍛えよ、というのが神の教えだ。このふたつの手段によって、人は完璧な存在となる。-プラトン』

 

 

前置きがだいぶ長くなりましたが、ここから中身をちょこっとだけご紹介です。皆さん、ストレス感じていますか?ストレス発散には何をしますか?おいしいものを食べる?買い物?ひたすら寝る? 

 

 

 

「ストレスは体に悪い、だから取り除くことが大切」と多くの人がストレスを「悪」ととらえていることと思います。確かに、著書のレイティさんも慢性的なストレスは不安障害やうつ、高血圧や心臓疾患などを引き起こし、がんを誘発することもあると言っています。また慢性ストレスが脳をズタズタにすることもあると言ってます。

 

ここからがレイティさんの主張のおもしろいところなのですが、そんな「諸悪の根源」のストレスを「取り除く」のではなく、「ストレス免疫をつけよう」と言っているのです。

 

「逆境が人を強くする」ということは、なんとなくイメージできますよね。困難があればこそ努力し、それを乗り越えることで人は成長する。逆を言えば、順境の中では、現状に満足しがちで、何かを学んだり、成長したりというのは難しいのかもしれません。そしてこの理論は、細胞レベルにも当てはまるそうなんです!

 

 

 

細胞って理科の教科書で見たことありますよね。このちょっと不気味なちっこいやつが「逆境に負けてたまるかー!」ってなるらしいのです😆

 

木を思い描いてみて下さい。脳の神経細胞(ニューロン)は、木に似ています。枝の先にはシナプスという葉がついています。脳に刺激が入ると、新しい枝が伸び、葉であるシナプスも増え、より強い木になります。そして、人が繰り返し通ることで道ができていくように、ニューロンで結ばれた脳の回路(枝)も情報が何度も通ることで、さらに強くなっていきます。

 

 

 

筋肉を鍛えると、いったんは筋肉が傷つきますが、それが修復されることで筋肉が強くなっていくのはご存知ですよね? これと同じように、ストレスによってニューロンは傷つくのですが、修復メカニズムによって傷ついたニューロンはより丈夫に作り直されるそうです。つまりストレスによって鍛えられ、ストレスによって成長に拍車がかかり、ストレスによって回復能力が上がっていくということです。これが「ストレス免疫を高める」ということです。ストレスは良いか悪いかの二者択一ではなく、成長のために必要不可欠だということです。

 

 

 

ストレスに対する耐性を上げるためには何をすべきなのでしょうか?一見逆説のように感じますが、ストレスをあえて加えることが大事なのです。では、どうやって自分にストレスを与えたらよいのでしょうか? 嫌いな人と一日中一緒に過ごす? 苦手なことをあえてやる? この本をご紹介した時点でもう答えはお分かりだと思いますが、正解は運動です。「運動ってストレスなの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、運動も実はストレスなんです。苦手な人に会うことも、難しい本を読むことも、筋肉を動かすことも、脳に負担がかかることは全てストレスと言えます。脳からしてみれば、程度の差はあったとしても、その内容はなんであっても、ストレスはストレスなんだそうです。

 

 

 

少し科学の話になります。ニューロンの結びつきを強化するタンパク質の中でも、最も有名なものに「脳由来神経栄養因子(BDNF)」があります。先ほど、木とニューロンの回路は似ていると書きましたが、BDNFは木を強くする肥料のように、ニューロンの回路の成長を促し、強化する働きがあります。運動にはこの肥料であるBDNFを脳の至るところで増やす効果があるそうです。運動をする⇒BDNFが増える⇒脳の回路が強化される⇒ストレスに強くなる、という図式が完成するというわけです。

 

ストレス発散のために運動をするという方も多いと思いますが、運動は終わった後にスッキリするというだけでなく、長期的な観点からもストレスに強くなれるということです😊

 

もし皆様の周りに繊細な方、少々打たれ弱い方、消化しきれないほどのストレスを抱えている方、生きづらい毎日を送っていらっしゃる方がいるようなら、優しい声かけにプラスして、一緒に筋トレ、一緒にランニングなんかがその方を救う一番効果的な方法かもしれません。

 

 

運動を続けることで、繊細な方は図太く、打たれ弱い方は打たれ強く、ストレスを抱えている方はストレスを感じづらくなる、ということが科学的に証明されているというのは、繊細な私にとってはとても嬉しい話でした。なんちゃって。

 

文:真木