野菜ジュースの栄養は?

「ほぼ揚げ物一色のコンビニ弁当を食べる時は、飲み物は野菜ジュースにして野菜不足を補う」

「朝食はトーストだけだと栄養が気になるから、100%のオレンジジュースでビタミンCを補給する」

 

以前の私はよくこういうことをしていました。別に野菜ジュースが飲みたいというわけではなく、それを飲むことで明らかに体に悪いであろう酸化した揚げ物を少しでも中和したいという気持ちからです。オレンジジュースも同じです。オレンジジュースは好きですが、それ以上にビタミンCを取れたという満足感が得られ、朝からちょっと体に良いことをしたと思っていました。でも実際のところはどうなのでしょう?

 

 

 

心強いフレーズが並んでますね~!

 

「1日分の野菜」

「ビタミンC1000㎎」

「野菜1日これ1本」

「1食分の野菜」

「栄養機能食品」

「管理栄養士98%推奨」

 

野菜や果物を摂らなくても、これを飲めば「栄養」はしっかりと摂れるような気がしますよね。ジュースなら野菜嫌いな方でも比較的飲みやすいですしね。でも本当に野菜や果物代わりになるんでしょうか・・・?

 

 

 

LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割を担っており、増えすぎると動脈硬化を起こし、心筋梗塞や脳梗塞の引き金になります。いわゆる「悪玉コレステロール」です。

 

グラフはLDLコレステロール値の変化を表しています。決められた食事にリンゴ1個を加えたグループでは、4週間後にLDLコレステロールの低下がみられました。

 

 

 

2本目のグラフは決められた食事に加えて、4週間「透明の100%リンゴジュース」を飲んだグループのLDLコレステロール値を表しています。わずかにLDLコレステロールが上がっています。

 

ちなみに「透明のリンゴジュース」とは、圧搾したリンゴ果汁の繊維質を濾過したリンゴジュースで、一般的に売られているリンゴジュースはこれにあたります。長期保存が可能で、製造コストが低いため、大量生産に向いているからです。

 

 

 

3本目のグラフは「濁ったリンゴジュース」を飲んだグループです。

 

「濁ったリンゴジュース」とは圧搾したリンゴ果汁の繊維質を濾過せず、変色を防ぐためにビタミンCを加えたものをさします。りんごを食べたグループほどではありませんが、わずかにLDLコレステロール値が下がっています。

 

 

50年くらい前までは食物繊維は栄養価値のない「取るに足らない」成分と考えられていました。エネルギーにもならず、ただただ便となって排出されるだけで、他の栄養素の利用を妨げるとすら考えられていました。そんな日陰の存在だった食物繊維が一気に注目を浴びるようになったのが1972年に「食物繊維が大腸がんの予防に効果的」と判明したことがきっかけだそうです。

 

今では厚生労働省も食物繊維が血管の炎症を抑えたり、肥満や糖尿病の予防、血圧やLDLコレステロールの上昇リスクを抑える働きがあることを認めています。そうなってくると、「繊維質を濾過」しているリンゴジュースはリンゴを食べることで受けれる恩恵にあやかれないのも納得ですよね。できればジュースじゃなくて丸ごとが理想的なようです。リンゴジュースを飲む時も、選択肢があれば、画像の右のように混濁タイプだとよりリンゴそのものに近い栄養素を得られるかもしれません。

 

ところで、リンゴとリンゴジュースの違いが「食物繊維」だけだとしたら、ジュースに食物繊維を加えれば、リンゴと同じ効果を得られるのでしょうか?残念ながらそんな単純な話ではないようです・・・

 

 

ポリフェノールには「抽出性ポリフェノール」と「非抽出性ポリフェノール」というのがあるそうです。

 

グラフは野菜、果物、豆、ナッツ、穀物といった菜食料理を食べた時に得られるポリフェノールを表しています。左端の低いグラフが抽出性ポリフェノール、中央が非抽出性ポリフェノール、右端が2つのトータルです。「非抽出性」の方が圧倒的に多いのが分かりますね。しかし、ポリフェノールの研究というのは、「抽出性」を対象にしたものばかりだそうです。と言うのも、現在、一般的に行われている方法では「非抽出性」の方を分析することができないかららしいです。

 

食物繊維を取り除くということは、食物繊維内にある栄養素も一緒に取り除くことになってしまいます。その1つが非抽出性ポリフェノールです。

 

 

画像のような食物繊維を粉状にした製品もいろいろとあるようですが、そういったものに「非抽出性ポリフェノール」が含まれているかというと、残念ながら含まれていないと思われます。

 

そうなると、リンゴジュースに食物繊維だけを加えても、リンゴそのものに含まれる栄養素はやはり完全には再現できないということです。加工したものは天然にはかなわないということのようです。

 

 

「栄養学」というのはまだまだ発展途上の学問です。現在ある栄養素というのは「その存在が人間によって確認されて、抽出に成功した」というだけのものです。まだまだ存在にすら気づいていない、存在はわかっていても抽出できないという栄養素が山ほどあるかもしれません。

 

「ベータカロテン」は野菜類に多く含まれます。体に良い栄養素って感じがしますよね?ところが、ベータカロテンをサプリにして摂取すると、癌の発症率が上がるとする研究があるそうです。ベータカロテンが豊富な人参を食べて、癌のリスクが上がるという話は聞いたことがありません。野菜や果物からある栄養素のみを取り出して、それを摂取することは、野菜や果物を丸ごと食べることの「代用品」にはならないということのようです。

 

ちなみに誤解のないように・・・このブログに載せた野菜ジュースやリンゴジュース、食物繊維パウダーやファイブミニにはなんの恨みもありません。私自身こういったものを食べたり飲んだりすることもあります。ただこういった加工された食品・飲料やサプリメントは、あくまで補助的なものであり、果物や野菜はもちろん、肉や魚や穀物といった自然界に存在するものにはかなわないと思います。嗜好品として摂取するのでなく、栄養を考えてということであれば、人の手が加わったものより、「丸ごと」が良いようです。

 

 

文:真木

 

↓引用動画