6回やって思ったこと

4月から始まった新しいレッスン「スティック・モビリティ」をこれまで6回行いました。6回やってみて私が感じたこと、これを今日のブログに書きたいと思います。とりとめのない話になるかもしれませんが、お付き合いください。

 

色々な気づきがあり、自らの説明不足や、指示の出し方の拙(つたな)さを改めて痛感したのですが、面白い発見もありました。

 

それは、他のレッスンの時に、「このお客様は体が硬い」と思っていた私の認識が覆されたり、逆に「柔軟性があるから、スティック・モビリティは大丈夫だろう。」と思っていた方が、意外にも苦戦されている姿を見て、「柔軟性」と「可動性」はイコールではないんだな~と、身を持って感じた、ということです。

 

 

「柔軟性」は、簡単に言ってしまえば、「体の柔らかさ」です。では、「可動性(モビリティ)」は何か言うと、これまた簡単に言ってしまえば、「どれだけ大きく動けるか」です。1枚目のブルース・リーが行っているのは、柔軟性を高めるためのストレッチです。一方の2枚目は、可動性を高めるためのトレーニングと言えます。柔軟性にはストレッチ、可動性にはトレーニング。そうです、可動性を高めるためには、ストレッチだけでは足りないのです。ストレッチに加えて、筋力やバランス力を高めるためのトレーニングが必要なのです。

 

2枚目のブルース・リーの動きを見ながら、想像してみて下さい。まずは右足を膝を伸ばした状態であの高さまで上げるには、当然ながら柔軟性が必要です。では柔軟性だけがあれば、この姿勢をとれるかというと、そうではありません。足を上げるための筋力はもちろんのこと、上半身が倒れないように起こす力も必要ですし、そもそもグラグラしてしまっては、この体勢にはなれないので、バランス力も必須です。『可動性=柔軟性+筋力+バランス力』と言えます。

 

 

話を戻しますが、私が「体が硬い」と認識していたお客様(以下、A様)が、スティック・モビリティでは、こう言っては失礼ですが、思いのほか上手に動けていたのはなぜか、を考えてみました。

 

私が導き出した答えは・・・その方は、素晴らしい可動性をお持ちである、ということです。まず、A様は平均以上の下半身の筋力があると思われます。それは、ワークアウトなどの動きを見て、推測したことです。もう1つは、A様のバランス能力の高さです。今はなくなってしまったのですが、以前、「スタビリティ」というレッスンがありました。スタビリティは「安定性」という意味で、その名の通り、「安定性」を高めるためのレッスンでした。あまり人気がなく、なくなってしまいましたが、A様はそのレッスンが、とってもお上手だったことを、思い出しました。

 

大半の方は、柔軟性=可動性ではありません。ほどんどの方が、柔軟性>可動性です。どういうことかと言いますと、棒に足を乗せてストレッチをしているブルース・リーの写真を思い出して下さい。ブルース・リーが棒の支えがなくとも、棒の高さまで足を上げて、キープすることができるのなら、その場合のブルース・リーは、柔軟性≒可動性で、柔軟性が可動性とほぼほぼ同じと言えます。

 

ところが、棒があれば、棒の高さまで上げれるけど、棒がないと、その高さまで足を上げてキープすることができない、という場合には、柔軟性>可動性、つまり柔軟性の方が可動性より大きいとなります。

 

A様は柔軟性だけで言えば、平均くらいだと思います。特別硬くもないけど、際立って柔らかい、というわけでもありません。でも筋力とバランス力は平均より上なので、一般的には柔軟性>可動性となりやすいのに、A様は柔軟性≒可動性であり、それがスティック・モビリティで発揮されたのだと思われます。(スティック・モビリティはその名のごとく、どちらかと言うと柔軟性より可動性を鍛えます。)

 

 

では、柔軟性は高いのに、スティック・モビリティは意外にも苦戦されていたお客様(以下、B様)には、一体何が起きたのでしょうか。

 

バレリーナの柔軟性の高さは、誰もが知るところです。でも、私はバレリーナの本当のすごさは柔軟性ではなく、可動性だと思っています。写真の方を見て下さい。あの高さまで、なんの支えもなしに足を上げて、微動だにせず止まる。これは、驚きの可動性です。バレリーナは間違いなく、柔軟性≒可動性だと思います。

 

プロのバレリーナは、引退後に股関節に痛みが出る人が多い、と聞いたことがあります。バレリーナになるような方は、子供の頃から訓練を受けている方が多いと思われるので、たとえ現役を引退しても、ある程度の柔軟性は保たれます。(バレリーナとして十分な柔軟性とは言えなくとも、我々一般人よりはるかに高い柔軟性という意味で)ところが、踊ることをやめれば、筋力は落ちます。それに伴い、バランス力も落ちます。そうすると、人並みはずれて柔らかい関節を、支えるだけの筋肉がない、という状況になり、これが痛みを起こす原因となりうるのです。その時のバレリーナに起きていることは、柔軟性>>>可動性、つまり柔軟性だけがやたら高く、それを補うだけの可動性がない、という状況です。

 

B様は、柔軟性は平均以上です。筋力やバランス力はと言うと、おそらく平均くらいかと思います。となると、B様は、引退後のバレリーナのように、柔軟性>>>可動性という状態になっていると推測できます。柔軟性が高い方は、可動性を上げるのも大変です。なぜなら大きく動く関節を支えるには、それだけ筋力も強くしておかなければいけないからです。B様の筋力・バランス力が上がり、可動性が柔軟性に近づいた時、その時はB様は、「現役バレリーナ並みに動ける体」を手に入れられると思います。

 

柔軟性はとても大切です。生まれながらに柔らかいという方は、本当にラッキーだと思います。ただ、「本当の意味で動ける体」を手に入れるためには、可動性はもっと大切です。

 

上述のように、私達の多くは、柔軟性>可動性です。この差をいかに縮め、柔軟性≒可動性にできるが、ここが重要だと思います。

 

文:真木