「良い姿勢」と聞いて、どんな姿勢を想像されますか?多くの方が「背筋が伸びた姿勢」を想像されるのではないでしょうか。「良い姿勢」を医学的に定義すると、
頭蓋骨や脊椎、骨盤などの骨格構造が正常な位置にあり、重力下で身体のホメオスタシス(恒常性)を維持するために、合目的な状態にあること
だそうです。頭や背骨、骨盤があるべき位置にあって、さほどの疲れや不快感・痛みなどが出ず、正常範囲内の動きに対応できる状態、といったところでしょうか。また、「良い姿勢」の一要素として、「見た目の美しさ」を加えることもあるようです。
学生時代に「理想的なアライメント(姿勢)」として教わったのが、この絵です。赤の点線が一直線で、その線に重心があるのが「良い姿勢」だとか。
これに難癖をつけるつもりではないのですが、最近は私自身、「良い姿勢」がなんであるか、正直よく分かりません😅解剖学?運動学?的には、画像のような姿勢が正しいのかもしれませんが、人間の骨格構造なんて千差万別ですからね~。姿勢が原因で、痛み(腰痛、肩こりなどなど)が出ているとか、見た目が気に食わない、などの理由があるなら、直すべきかもしれませんが、今の姿勢で日常生活にこれと言った問題がないのなら、その姿勢がその方にとっての「良い姿勢」なのかな~という気もします。
とは言え、いわゆる「良い姿勢」は外観的にはやはり美しいと思いますし、なにより画像のような姿勢であるということは、体の前面と後面の筋肉のバランスがとれている証拠だと思いますので、筋肉のバランスを整えるという意味では、「良い姿勢を意識する」というのはとても良いことだと思います。
さて、皆さんの姿勢は、上の画像のA~Eのどれに近いですか?一番左がGOOD、いわゆる「良い姿勢」です。
画像をじっくり見ると、良い姿勢と比べ、A~Eは主に背骨と骨盤で「変形」が起きています。変形と言っても、骨そのものが「グニャっと形が変わる」という意味ではなく、「あるべき位置からずれている」といった意味です。この「変形」の度合いには、段階があります。
第1段階⇒関節や靭帯などは固まっておらず、筋肉も伸張性は残っている。変形の原因は、筋肉のアンバランスのため、筋肉を鍛えて、アンバランスが整えば、姿勢を自力で直すことができる。
第2段階⇒関節や靭帯などは固まっていないものの、長期間に渡り、その姿勢を続けたがゆえに、筋肉の伸張性が下がっている。また、筋肉のアンバランスも強く、自力では姿勢を直すことができないが、外力(人の手を借りたり、物を使えば)が加われば、姿勢を直すことができる。
第3段階⇒関節や靭帯などが固まり、筋肉も伸張性がなく、自力でも外力を加えても姿勢を直すことができない。
早い話が、悪い姿勢も長~く続けていると、そのまま体が固まって、そのうち自分では直せなくなるし、更にひどくなれば人の手を借りても治せなくなる。だから、そうなる前にどうにかしないとダメですよ、という話です。第1段階で止めることが重要になります。
A~Eの姿勢を1つずつ見ていきたいと思います。
Aは誰でもやることがある姿勢です。普段はGOODの方も、だらけた立ち方、ダラッと立つことありますよね?そんな時は、Aの姿勢になる場合があります。
お腹と前ももを前方に張り出すように立ちます。お腹と太ももを張らせることで、抗重力筋(重力にあらがって姿勢を保持するための筋肉)を使う必要がないので、楽に感じます。一方、骨盤が少し前傾するため、長い時間この姿勢でいると腰への負担が大きくなります。
話を進める前に、今一度、「骨盤前傾」を復習しておきたいと思います。右側が「骨盤前傾」の状態です。
「腰が反っているから骨盤前傾」と判断される方が多いと思いますが、厳密に言えば、腰部の反り具合だけで判断することはできません。もしかしたら、腰が反っているように見えて、実は、お尻がと~ってもプリップリしているだけかもしれませんので。
元々、骨盤というのは若干、前側に倒れています。どの程度倒れているかというのが、1枚目の画像です。おへその外側、ちょっと下の方にボコっと突き出ている所、これが上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)です。そして、上後腸骨棘(じょうごちょうこつきょく)は背中側にあり、おへそと同じくらいの高さ、背骨より少し外側のこれまたボコっとでている所です。骨盤が理想的な位置にある場合、上後腸骨棘は上前腸骨棘より2~3横指上にあります。
ちょっとつまらない話になってしまいました。読むのめんどうくさい、自分で確かめるのもめんどうくさい、でも自分の骨盤が良い位置にあるかどうか知りたい!という方は、レッスン前後にお声かけ下さい。上前腸骨棘と上後腸骨棘を触らせていただきますね~😊
骨盤前傾、なんとなくお分かりいただけたでしょうか。話を戻します。
B、Cはいずれも胸椎の丸まりが強くなっています。胸椎の丸まりが強いと、多くの場合、骨盤が前傾しやすくなります。BとCの違いは、重心の位置です。Cの方がお腹の張りだしが強く、バランスを取るため、上半身は後ろに倒れ気味になります。結果、CはBよりも重心が後ろにあります。
DとEでは、骨盤が後傾します。骨盤前傾の逆で、骨盤が後ろに倒れた状態です。背中からお尻までペタ~っとなります。日本人の「悪い姿勢」代表とも言える形です。ちなみにEはDに胸椎の丸まりが加わった形となります。
最初の方に書きましたように、「良い姿勢」というのは若干の個人差があると思います。
姿勢を形作る要素は色々とあります。骨の長さや形はもちろん、筋肉の強さ・弱さ、筋肉の硬さ・柔らかさ、生活習慣や動きのクセも大きく影響してきます。
良い姿勢の定義は難しいものがありますが、ご自身が思う「綺麗な姿勢」を目指してみると、鍛えるべき箇所、ほぐすべき部位が見えてくるかもしれません。
文:真木
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