忘れ去られた筋肉

誰しもがそうですが、比較的強い筋肉と比較的弱い筋肉があります。太ももを例えにすると、ほとんどの人が大腿四頭筋(太ももの前側)が強く、ハムストリングス(太ももの裏側)が弱いと思います。でもこの筋肉に不均衡は意識的にトレーニングをすることで直していくことができます。

 

ところが、トレーニングの習慣がある人からさえも忘れ去られがちな筋肉が存在します。

 

グラフは赤が筋トレ習慣のある人、水色がない人を表しています。左側のグラフは複数の筋肉の強さに違いがあるかを表しています。当然のことながら、筋トレ習慣のある人の方が強い筋力レベルとなっています。

 

一方の右側のグラフはある1つの筋肉の筋力レベルを表しています。なんと筋トレ習慣のある人もない人も大して差がないという衝撃的な結果になっています。このかわいそうな筋肉なんだと思いますか?

 

 

その筋肉とは「僧帽筋」と呼ばれる筋肉の「下部線維」です。僧帽筋は以前のブログにも登場したことがあるのですが、上部・中部・下部で強さに大きな違いがあります。圧倒的に強いのが上部線維です。「バートレ」のレッスンを受けられた方ならご存知かと思いますが、下部線維はきちんと働いているかどうかを感じ取ることすら難しいくらい、存在感のない筋肉です。

 

だからと言って、重要度の低い筋肉なのかと言うともちろん違います。むしろとても重要な部位で、肩甲骨が「理想的」な動きをするためには、なくてはならない存在です。僧帽筋下部の働きが不十分だと、手を挙げる動作で肩甲骨の安定性が下がり、肩の痛みの原因になりえます。頭より上に腕を上げるようなスポーツをされている方は、肩のケガ予防という意味でも絶対に鍛えた方が良い筋肉です。

 

またスポーツをされていない方であっても、美しい姿勢を作るという意味で大切な部位です。同じ筋肉であるにも関わらず、上部と下部では働き方が真逆なため、下部が弱いと上部はますます強くなり、筋肉の不均衡が増してしまいます。上部が強くなるとどういう姿勢になるかと言うと、肩甲骨が上に引っ張られ、丸まった肩、いわゆる猫背のような姿勢になってしまいます。

 

 

 

 

では僧帽筋下部のエクササイズをご紹介します。いつも言いますが、大切なことは効かせたいところに効いているかを感じ取ることです。「脳が見つけることができない筋肉は鍛えることができない」という言葉があります。動きに集中するのではなく、僧帽筋下部が働いているかどうかに全意識を集中させて下さい。

 

長めの棒を持ち、椅子などに額を当て、正座で行います。背中が丸まらないように気を付けて下さい。額を当てたまま、腕を上げます。ゆっくりと上げ下ろしをします。余裕があれば上げた状態で10秒程度キープしてください。

 

 

棒の持ち方は1枚目のように順手、2枚目のように逆手、はたまた3枚目のように親指で挟むような形、どれでもOKです。巻き肩傾向のある方は逆手か3枚目の持ち方がおすすめではありますが、順手の方が僧帽筋下部が使われている感じがわかるのであれば、持ち方にとらわれる必要はありません。

 

 

上の画像は僧帽筋下部を別の方法で鍛えている動画から抜粋したものです。1枚目の画像でトレーナーが手を当てている箇所とその少し下が意識すべき部位です。2枚目の箇所が強く働く感じがあると、そこは僧帽筋上部です。僧帽筋上部はできるだけ刺激しないようにします。どうしても僧帽筋上部に力が入る感じがするのであれば、肩甲骨を下げる(骨盤に近づける)ようにしてみて下さい。

 

 

2つ目は腕をWのように開く動きです。画像のように伸縮性のあるものがあれば、より僧帽筋下部を刺激できますが、なければ手には何も持たずに行ってください。気を付けるポイントは肘が体から離れないようにすることです。画像のようにこぶしが肘より高い位置に持ってきた方が僧帽筋下部に効きやすくなります。ちなみに肘とこぶしの高さが同じくらいの場合はどちらかと言うと僧帽筋中部に効きます。中部も大切ですので、あわせて行ってみると良いと思います。

 

文:真木

 

↓引用動画