アイ・ティー・バンド

膝の外側に痛みが出るという方、もしかしたらその痛みはアイ・ティー・バンド(IT Band)が原因かもしれません。今回は、サッカーやバスケなどのスポーツをされている方、ランナーやロードバイクなどされている方によく見られる「ITバンド症候群」についてです。

 

 

ITバンドは腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)とも呼ばれます。画像でわかるように骨盤から膝下にまで伸びる長~い靭帯です。大殿筋と大腿筋膜張筋につながっています。膝を安定させる大切な靭帯です。

 

 

膝の関節をもう少し詳しく見ていきます。大腿骨(だいたいこつ、太ももの骨)と脛骨(けいこつ、すねの骨)と膝蓋骨(しつがいこつ、膝のお皿)で膝の関節がつくられています。

 

大腿骨の下の方に外側上顆(がいそくじょうか)という部位があります。腸脛靭帯はこの外側上顆を通り越して、脛骨にくっついています。

 

画像でもおわかりいただけるように、外側上顆は少し出っ張っていますよね?膝の曲げ伸ばしをする時、腸脛靭帯は前後に動くので、外側上顆の所で摩擦が生じます。この摩擦による炎症が膝の外側の痛みの原因です。ITバンド症候群がスポーツをする人によく見られるのは、膝の曲げ伸ばしが関係しているからなのです。

 

ではここからはITバンド症候群にお悩みの方にオススメの3つのエクササイズのご紹介です。もちろん痛みがない方が行ってもOKですよ。

 

 

1つ目は大腿筋膜張筋をほぐします。これはレッスン前などに行っているお客様も多いかと思います。画像ではゴルフボールくらいの小さなボールを使っていますが、当店で使っているような小さ目のローラーでももちろん大丈夫です。大腿筋膜張筋は体の真横ではなく、少し前側に位置していますので、圧をかける時には2枚目の画像のように上体を少し前に倒しながら行って下さい。

 

 

大腿筋膜張筋をほぐす時の注意点としては、腸脛靭帯ではなく、筋肉にボール(もしくはローラー)を当てるということです。

 

靭帯というのは強靭な組織なので、圧をかける程度でほぐれるということはほとんどありません。逆にほぐれてしまったら、膝がぐらっぐらになってしまいます。ボールを当てる位置は靭帯ではなく筋肉ということを念頭に行って下さい。

 

上述のように、腸脛靭帯の摩擦による炎症が痛みの原因です。摩擦が悪いのに、更にそこに圧をかけるのは良くないというのは想像できますよね?膝の外側に痛みがあるからといって、その部位をゴロゴロしたら、痛みは悪化するだけです。

 

 

2つ目はストレッチです。画像のように肘や手の平で壁に寄りかかり、骨盤を壁に近づけるようにして、黄色の線の部分を伸ばします。2枚目の画像のように足を交叉させて行ってもOKです。より伸びを感じられる方で行ってみて下さい。

 

 

 

 

3つ目は中殿筋の強化です。ITバンドにくっついている筋肉は大殿筋と大腿筋膜張筋なので、一見、中殿筋は無関係に思えますが、これが実はけっこう大切なんです。

 

 

 

 

中殿筋は「股関節の外転」と言う足を外側に開く動きの時に働く筋肉です。この筋肉が弱いと、例えばランニングで足が地面に着いた時に、股関節が内転し(内側に入る)、膝も内側に傾きます。これがITバンドに非常に負担をかけるのです。中殿筋が弱いと、ITバンドに余計な負担がかかるということです。

では中殿筋エクササイズの方法です。横向きに寝て、上の足を上げます。足を上げる時に、上体や骨盤が前後に倒れないよう気を付けて下さい。足は真上に上げるのではなく、やや後ろ方向に上げます。2枚目の画像の黄色の丸の部分が中殿筋です。そこが働いていることを感じ取ってください。60秒間、足を1ミリたりとも落とすことなくキープできますか?もしキープできないとしたら・・・中殿筋弱ってますよ!1ミリは大げさですが、いかがですか?

 

キープした後は、上の足の上げ下げも行ってみて下さい。回数に決まりはありませんが、中殿筋がプルプルして、「もう上げれない!」というくらいまで行ってみて下さい。

 

 

1枚目の画像のようにつま先が上を向かないように気を付けます。また、上げた足が前の方へ出てしまうと、2枚目の黄色の丸の部位が働いてしまいます。ここが働くと中殿筋は全く働かず、ITバンドに余計負担がかかり、本末転倒になってしまいます。上げた足の位置に気を付けて下さい。

 

「(慢性の)痛みのある時はどこかが硬い。だからほぐす・伸ばす」と考えがちです。硬いところをほぐしたり、伸ばしたりすることはもちろん大切ですが、それだけでは不十分です。腰痛しかり、肩こりしかりです。痛いということは、必ずどこかに働くべきなのに怠けている筋肉がいて、その怠けている筋肉を補うために過剰に働いている筋肉がいるのです。働き過ぎが原因で硬くなっているのです。であるならば、働き過ぎた筋肉をほぐして伸ばしても、怠け者が働かない限り、その働き者は辛くてもまた働いてしまいます。大事なのは怠け者を働かせることです。もし中殿筋が怠けているなら、すぐに叩き起こして下さい。

 

文:真木

 

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